第58章 情交 ※
ナナは小さく俺を受け入れる言葉を呟いた。
胸が高鳴るという感覚は、こういうものだったかと思い出す。いい歳をしてまるで思春期の少年のように、目の前の女性に劣情を隠せずその唇を重ねた。
柔く温かいその唇は、最初こそ固く閉じられたまま触れるだけの応じ方だったが、徐々にその昂ぶりと共に俺を受け入れるように小さく開かれていく。
舌を侵入させると、びく、とナナの身体が震えた。
唾液が絡み合いちゅくちゅくと鳴る水音に混じって、ナナの声が漏れ出る。
「………ぁ………、んぅ、………ふっ……ぁ………。」
可愛い。
ただひたすらに、懸命に受け止めて応える姿がたまらない。
しばらくすると、ナナのほうからも俺を求めるように舌を絡めてきた。意地悪くそれに応えずに唇を離すと、どこか不安そうに俺を見上げる。
「…………?」
ここからどうすればいいのか、といった表情でナナは目を逸らし俯く。このまま抱き上げてベッドに運んでしまうのもいいが、もっと明るい場所でナナの美しさを堪能したい。
「―――――服を脱いで、ここにおいで。」
膝をぽんぽんと叩きながら、意地悪な笑みを湛えて言うとナナは困惑した表情を見せた。
「えっ、服……ここで、脱ぐ、んですか……?」
「――――ランプの灯る明るいところで、君の全てが見てみたい。」
「は、恥ずかしいです………。」
「どうせ脱ぐことになるんだ、いつどこで脱いでも同じだろう?」
「~~~~~……っ………。」
ナナは言い返せないまま椅子から立ち上がり、ごくんと喉を鳴らしてから、両手を交差させてシャツの裾を掴んでゆっくりと引き上げた。
白く華奢な腰と、小さな臍のまわりの腹部は、訓練の成果か柔らかな筋肉で引き締まっていて、見るに美しい。
シャツから頭を抜くと、白銀の髪がふわりと浮いた。
ズボンのボタンを震える指で外し、腰を少しくねらせてそれを降ろし、交互に足を抜く。
まるで観劇するかのようにまじまじとその様子を堪能する。