第55章 南方駐屯訓練兵団
日が落ちてからも2時間近く走って、小さな町を見つけた。
明日の朝に帰着すれば良いから、今日は宿で夜を明かすことにした。食事をして、宿に入る。
任務を終えたことを、3人でささやかにビールで乾杯をした。
「いや、結構勧誘できたんじゃねぇかな。」
「はい、リンファの立体機動術に見惚れている子が多かったですね。あともちろん、サッシュさんの戦闘にも!!」
「――――ナナは相変わらずガキ共から見ても女神だそうだよ。」
リンファはからかうように笑った。
「………立体機動も頑張ったんだけどなぁ……やっぱりリンファと比べられちゃうと、まだまだ甘いってことだね。」
「いや、あんたは訓練兵団経験がないのにここまで立体機動を使いこなしている特例として、それはそれで度肝抜いてたから。――――エルヴィン団長の思惑通り、色んな切り口で興味は引けただろ。」
「――――だといいな!俺もう一本飲も!」
「あ、じゃあ私もいただきます!」
サッシュさんがもう一本のビールに手を伸ばしたので私も便乗しようとすると、リンファが心配そうに私をなだめた。
「えっ、ちょ、大丈夫?ナナいつも酒なんて飲まないじゃん。」
「―――――うん、でも飲みたい気分。」
「―――――どうしたんだよ。なんか、あんだろ。」
楽しい空気が一転、シリアスに変わる。リンファには敵わない。バレバレなんだ。
「―――――無理に楽しそうにしてなくていいよ。ずっと、心ここにあらずって感じだ。なにか辛いんだろ?」
「――――――………。」
いつでも私のことを見守ってくれている2人だから、これ以上隠しておくことはしたくなかった。