第5章 絶望
「………あいつ、死んだぞ。」
「え………?」
「もう一年ほど前か。病気だった。俺が調査兵団に入ったことを………それは喜んでやがった。それに………ナナ、お前の事も誇っていた。」
ナナの大きな目から、大粒の涙が零れ落ちた。次から次へと、その頬を濡らしていく。
ナナは傷ついている。だが、不謹慎にも思ってしまった。綺麗だと。
「ワーナーさん………。」
拭うこともせず、ぽたぽたと零れ落ちる涙に、触れてみたいと思った。俺は手を伸ばし、その涙を指で掬う。
「ナナ!!!ナナじゃないか?!」
能天気な声の主は、遠慮なく俺たちに近づいて来る。
「ハンジさ……ん。」
「泣いてる!!!!」
ハンジは俺を睨み付ける。
「いや待て、俺のせいじゃねぇ………。」
いや、明かした俺が悪いのか……?
「久しぶりだね!本当に調査兵団に来てくれるなんて……!大歓迎だよ!!もしかしてエルヴィン待ちかな?だとしたら、残念だけど、多分今日は帰らないよ。」
「はい……そうですよね。やはり私、明日また出直して……。」
「帰るところもねぇんだろうが。」
「う………それは……まぁ……。」
ナナが口ごもる。ハンジはしめた、とばかりにナナを引き込もうとする。