第53章 惜別 ※
エルヴィン団長が、まるで違う人みたいだった。
大笑いをして、感情を前面に出して、「結婚してくれ!」??
どうしちゃったんだろうと心配になるほど、いつもの様子とは異なっていた。
でももしかしたら、あれが本当のエルヴィン・スミスという人なのかもしれない。お父様へのしがらみからも、団長としての重責からも解き放てば、驚くほど快闊で表情豊かな人なのかもしれない。
エルヴィン団長の言ったとおりだ。
その毒はどんどん私を冒している。その引力と魅力に、惑わされる。
それに、私を大きく揺らがせたのが、ワーナーさんの研究仲間がエルヴィン団長のお父様だったという事実だ。
エルヴィン団長と共に彼らの遺した夢を叶えることこそが弔いになる。
答えを、出すべき時が来たということだ。