第52章 盤上
兵舎に一番に帰還したのは、リヴァイ兵士長が率いる私達の隊だった。
その翌日にミケさん、ほどなくしてハンジさんも帰着した。
特に親しい顔ぶれの皆さんが変わらぬ姿で戻ってきたことに胸を撫で下ろしたけれど、ミケさんの隊からも1名の死者が出て、重傷者も数名出たそうだ。
亡骸を見つめるミケさんの背中に寄り添い、優しく慰めるように撫でるナナバさんの姿があった。
全員が揃った次の日、今回の調査の報告会が行われた。
「北は2体しか遭遇しなかったよ!壁の破壊も見られなかった。」
「……東は通常種4体、奇行種1体だった。同じく、壁の破壊はなかった。」
「――――西は通常種4体、奇行種2体だな。こちらも壁の破壊はなかった。」
「――――なるほど、やはり北に行くほど少ないか。ウォール・マリア内の巨人はシガンシナ区の穴からの流入だけと考えて良さそうだ。そうなると、その穴を塞いで少しずつ巨人を討伐していけば、ウォール・マリアの本当の奪還も叶うかもしれない。」
エルヴィン団長と共に想像した通りの結果だった。
「――――だが、どうやって塞ぐ?巨人が入れる程の大穴だ。作業も―――巨人がいる中で行うことになる。」
「巨人が少ない地域から資材を上げて壁の上を移動、壁上から穴を塞ぐことを考えるか……。」
ミケさんの問いにハンジさんが一案を投じ、ソファに寄りかかったままリヴァイ兵士長も続ける。
「――――そうだな。ここからの距離と、シガンシナ区までの距離を鑑みて妥当なのは西のクィンタ区あたりか。そこから資材を壁上へ上げ、南に運ぶ。だがかなりの遠回りだ。壁上では馬は使えねぇし、人力で資材を運ぶのは現実的じゃねぇ。」