第50章 悋気
二ファに後を任せて、他の雑務を片付けようと団長室に向かう途中、窓から訓練場に2人の人物の姿が見えた。
あれは――――――リヴァイさんと、ペトラ。
ペトラがリヴァイさんに教えを乞うているのか、立体機動からの斬撃の練習を繰り返しているように見える。
―――――羨ましい。
二ファも、ペトラも。
………私は戦力としてリヴァイさんに必要とされることはない。
守られることはあっても、誰かを守ることはできない。
怪我人を救うことはできても、怪我をさせないように共に戦うことはできない。
そんな私がリヴァイ兵士長の横に並びたいというのは、そもそも無謀なのではないか。どうやったって足を引っ張るんじゃないか。
私よりも、横に並ぶのに相応しい女性がいるのに、私が縛り付けてしまっているんじゃないか。
―――――ああ、良くないな。
私は私の武器で戦うと決めたのに。
他の誰でもなく、私を愛していると何度も伝えてくれたのに。
リヴァイさんから離れると、途端に自分のいる意味に自信が持てなくなる。
こんな事じゃいけない。
リヴァイさんが言ってくれた、『お前は大丈夫だ』
それを何度も頭の中でお守りのように再生しながら、ペトラとリヴァイさんに背を向けて団長室に向かった。