第5章 絶望
連れてきた三人の団員をそれぞれの場所に散らして視察を命じた。俺は最も混沌とした死臭と血の匂いが充満する悲惨なその場所に、白銀の髪の女を探した。
心臓がドクドクと脈打つのが分かる。
死体の山の中に、それを見つけたいのか、見つけたくないのか。
そんな中、ひと際大きく心臓が跳ねた。白銀の髪の小さな身体が、血まみれで蹲るような恰好の背中が見えた。
まさか。
呼吸が苦しく、身体に引き込んだ空気が重い。
身体の芯が痺れる感覚は初めてだった。
その時、その小さな身体は起き上がり、その手元にあった小さな子供の足に手早く包帯を巻きつけていった。
何かを子供に伝えて優しく頭を撫で、その身体を抱きしめると、こちらを振り返った。その顔は血と泥にまみれていたが、間違いなくナナだった。
「…………ナナ………。」
「………リヴァイ……さん……?」
生きていることに安堵した瞬間、ナナに歩み寄り、その腕を掴み身体を抱き寄せていた。
「……………よく、生きていた…………!」
「…………偶然、王都に戻っていて………。」
俺の腕の中で、小さく震えるようにつぶやく声が聞こえた。
「………そうか………。」
腕の中でナナの鼓動を感じ、自身の鼓動が落ち着いていくのがわかった。
「………怪我はねぇのか。」
「ないです。大丈夫です。」
俺は腕を解くと、ナナを開放した。
「そうか。」