第50章 悋気
真冬のはずなのにとてもポカポカする。特に背中がとても温かくて、鼓動を感じて心地いい。
目が覚めると最初に目に入ったのは、ベッド脇のサイドボード、そしてシーツの上の自分の両腕。と、私を抱き締めるように腰から伸ばされた腕がもう1本ある。
リヴァイさん…?寝起きのぼんやりした頭でとんちんかんなことを思いながらその腕の先の掌にそっと触れてみる。
リヴァイさんにしては大きい手。
自分の掌を合わせて大きさを確かめてみたり、指の節の太さを触って確かめてみる。
そうこうしてるうちに、段々と頭がハッキリしてきた。
「………俺の手がそんなに面白いか?」
その声にハッとする。
ちょっと待って、昨夜そういえば私は――――
ベッドに横たわったまま振り向くと、同じベッドの上で横たわるエルヴィン団長がくすぐったそうに笑いながら私を見ている。
「えっ、ちょっ……えぇっ?!私………っ……!」
思わず衣服を着ているかを確かめる。
服は、着ている。身体もなんともない……気がする。そしてなによりエルヴィン団長は―――――強引ではあれど、無理矢理そういうことをする人ではない。
「残念ながらなにもないよ。いいところで君が寝てしまったからね。」
「すみませ……いやすみませんじゃないです、なんで同じベッドで寝てるんですか……。」
「――――一つ、大人の常識を教えてあげよう。」
「はい?」
「――――酒が入った状態で、自分の部屋に招き入れた時点で抱かれる気があるということになる。」
「えっ。」
「だから本来寝ているうちに抱かれていても、文句は言えないぞ。俺が今回何もしなかったことは奇跡に近い。隣で眠るくらいは許してもらわないと。」
「………大人って怖いです。」
「――――寝起きの君も可愛い。」
話が噛み合っていない、急な甘い言葉にどう反応していいかわからず、真っ赤な顔を隠すように振り向いていた顔を元に戻した。