第49章 夜会
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「――――ナナ?」
唇の角度を変えようと少し離したとたん、かくん、とその首が横に向いた。
なんとも安らかな顔で寝息を立てている。
「おいおい、この状況とこのタイミングで寝るのか………。」
頬をふにふにとつまんでみても、髪を梳いてみても一向に起きる気配はない。
「―――――君はとことん俺を試しているのか?」
あわよくばこの機にリヴァイからかっさらってしまえると思っていたが、甘かったか。
君を手に入れるための算段を考えるのが楽しい。
君が笑うと嬉しい。
君の悩ましい姿に年甲斐もなく欲情する。
大人の余裕など、とうに持てていない。
どんな手を使っても、唯一無二の戦友から君を奪い取りたい。
でも―――――一方的な愛欲をぶつけられることに恐怖した過去がある君の、心を抉るようなことだけはしたくない。
「―――――今日は引き下がるよ。おやすみ、ナナ。」
その頬に小さくキスをした。
『いっそもう抱いてしまえ、あとでなんとでも弁明できるだろう?』
そう囁く自分の中の小さな悪魔を追いだせるぐらいには理性が残っていた自分を、褒めてやりたい。