第48章 夜会前夜 ※
次の日の朝、王都に発つためにエルヴィン団長との待ち合わせ場所に向かった。
「――――やぁナナ、リクエストしたドレスは準備してくれたかな?」
「おはようございます。はい、問題なく。」
夜会では、エルヴィン団長と共にダミアンさんと会うことになる。私はどんな振る舞いをするのが最善なのだろうかと考えると小さな不安がよぎり、馬に乗る前にふっと気合いを入れる。
その様子を見たエルヴィン団長が、声をかけてくれた。
「何か不安が?」
「はい……少し。」
「それは何にだ?」
「……ライオネル公爵と、会うことが……。」
エルヴィン団長の大きな手が私の頭を撫でた。
「それなら問題ない。何かあればその大きな瞳で私を見上げてくれればそれでいい。私が守ろう。」
さらりと言われるその言葉が、くすぐったくも頼もしい。次に小さく呟いたのは、エルヴィン団長のほうだった。
「――――良かった。」
「何がですか?」
「私と共に旅路につくことを嫌がっていたら、どうしようかと思った。」
「嫌ではないですが、不安はあります。………エルヴィン団長の部屋のランプは、都合よく点かなくなったりしますしね。」
私が冷めた横目でチラリとエルヴィン団長を見ると、少し気まずそうに、でもどこか嬉しそうに彼は笑った。
「バレていたのか。」
「バレてます。ズルい大人ですね。」
「ズルいからこそ、守れるものもある。」
「それは確かに……そうですね。」
「――――では行こうか、ナナ。」
「――――はい!」
私たちは王都へ向かって旅立った。