第47章 繙
「―――――約束だからな。溶けるほど甘く甘く愛してやる。」
「………お酒飲んだから、途中で寝ちゃったらごめんなさい。」
「寝かせねぇよ。俺をなめるな。」
「――――寝たのか、意識を失ったのか、違いはわかるんですか?」
「あ?知らねぇよ、じゃあ両方とも試してみるか?」
「リヴァイさんは有言実行だから怖いです。」
「―――――前から言ってるがナナ、空気を読め。抱き上げられたらもう黙って恥じらってりゃいいんだよ。喋り過ぎだ、お前は。」
「それはリヴァイさんがお酒なんて飲ませるから―――――――。」
「―――――悪いのは、その口だな?」
「――――――ぁ、待っ………。」
ナナのよく動く口を喰らい、おしゃべりを封じる。
酒が入っているのも一因だとは思うが、いつもより口数が多いのは、ほんの少しの蟠りを胸に抱えているからだということくらいわかる。
舌を絡ませながら自室のベッドへナナを運び、その身体を降ろした時に唇が離れると、ナナがへらっと笑った。
「―――――お酒臭い。」
「―――――お前もな。」
酒の力を借りて、ナナの“逃避願望”は小さく吐露された。その他のことは、話したくないのだろう。
それならそれでいい。
全てを知って全てを受け止めることだけが正しいわけじゃない。
この行為にも逃避を求めていたのか、酒の力か、ナナはいつも以上に敏感に反応した。
結局、何度か意識を飛ばし、最後の方には途中で眠るという有言実行を達成することになってしまった。
明日の朝起きたらまた、その事についてしたり顔で生意気な口をききながらじゃれて来るのだろう。
残酷な世界に立ち向かう術も持たず、命尽きるまでただ愛し愛されるだけの存在になりたい、そんなナナの願望が、痛いほど理解できる。
それでも。
その幸せを捨てて、仲間を目の前で失っても、俺達はこの残酷な世界に抗うことをやめない。
いつか自由を手にする日が来るまで。