第47章 繙
壁外調査の年内報告を終え、私はロイに手紙を書いた。
もちろん調査兵団として挙げた報告は、王政側からロイの耳には入るだろうけれど、それよりもさらに詳細を書き記して。新たに感染症が壁外から発生することはおそらくない。
巨人とは対照的に、目に見えないほどの小ささで人類を脅かす敵との、今壁内で細く長く続いているこの戦いに終止符を打つのはロイだ。
そのロイに少しでも何かを届けたかった。
年が明ければ、101期生の入団。その中にはモブリットさん、ゲルガーさん、グンタさんも含まれる。
そしてエルヴィン団長が調整中の、ウォール・ローゼから北へ向かってユトピア区からの壁外調査の計画も同時に進行している。
この年末年始はさすがにあらゆる機関が機能しなくなるため、多少一息つける時間を過ごせる。自分の家に戻って束の間の休息をとる兵士も少なくない。サッシュさんやオルオ、ペトラは帰省をすると言っていた。リンファは―――――――帰る場所など最初からないように、当たり前のように私の側にいる。
今年最後の日の午後、エルヴィン団長と外の世界の話をする約束を交わしていた。
何の話をしようか……そう思いながらワーナーさんの家から持ち帰った書物と日記をパラパラとめくる。
けれども、いつもほど気持ちが高揚しないのは、エルヴィン団長が少し怖いからだ。いや、厳密に言うとエルヴィン団長が怖いのは元から分かっていたこと。
―――――――そこに絡めとられそうな、弱い自分を信用できない。