第45章 一歩
思ったよりもナナが乱れた。
まぁ、無理もないか。
見知った顔が肉塊になって転がっていたところから始まり、目の前で仲間が努力も報われず死にゆく様は、我々よりも医療に精通している分、余計に堪えるものだったろう。
だが、こんなことで潰れて貰っては困る。
もっと冷静に、必要ならばもっと残酷になってもらわねば、私と共に生きる修羅の道は歩めない。
あの純真さ、まっすぐさは彼女の大きな魅力の一つだが、外の世界を見に行きたいと願うならば、そんな甘い戯言だけでは叶えられない。
恐らく―――――――近いうちに、その手で、巨人でなく人間さえも葬らなければならない日がやってくる。
そこに耐えうる精神力をナナがどこまで持てるか―――――――それもまた、無垢な少女を自分好みに育てるようでとてもそそる。
私の色に、染めあげていく。
それを達成した時、ナナはどんな風になっているだろうか。
想像しただけで滾る。
ふふ、と思わず零れ出る残酷な笑みを隠しながら、ナナが報告に来るのを待った。