第45章 一歩
12月26日。
その日は快晴で、乾いた空気が寒さをより際立たせていた。
起きぬけに窓の外を見ながらふっと吐いた息は、白かった。
静かに心を落ち着かせながら兵服に身を包む。
そんな私の髪を、リンファが結ってくれた。彼女と共に生きて帰ることを誓って、おそろいの髪飾りをお互いの髪にあしらう。
出陣する兵士だけがまだ暗いうちに静かに朝食を取った。
「まさか――――――あんたも行くのかい………。」
シチューを作るためにとてもお世話になったおばさまが、食堂の中から少し悲し気な表情を見せた。
私はなんのことはないと、笑って返す。
「はい。朝食ありがとうございます……力になります。」
「死ぬんじゃ、ないよ。」
「はい。帰ったら次は……ケーキの作り方を教えてくれますか?」
「――――――もちろんだよ。」
短いやりとりの中に感謝と決意を織り込めて、笑顔でその場を去る。
装備を整え、リンファと共に厩舎に向かう。
そこには愛馬を撫でる、アウラさんの姿があった。彼女もまた出陣する。ナナバさんの班だ。
アウラさんは私に気付くと、小さく意地悪な笑みを見せた。
「――――せいぜい死なないように足掻くことね。」
「――――アウラさんこそ。」
「―――――私が死んでも、リヴァイは………悲しまない……。」
俯いて言ったその言葉は小さすぎて、私には聞こえなかった。アウラさんは顔を上げると、感情的に強くその言葉を私にぶつけてきた。