第42章 急場
「――――――年内に壁外調査?」
リヴァイさんがすごく不機嫌そうにエルヴィン団長を見上げた。
「ああ、ごく小規模だが。」
「いや、急な話だね………まぁ、そっか……ウォール・マリア奪還作戦の後の状態の調査が疫病蔓延のために延び延びになっていたから………仕方ないっちゃ、ないけど……。」
「………いつも上はいとも簡単に言ってくれるな。」
久しぶりに幹部の皆さんが団長室に集まった理由は、想定外に急な壁外調査の話が出ているからのようだった。
リヴァイ兵士長だけでなく、ハンジさん、ミケさんも微妙な表情だ。
無理もない。通常年間で予定を立てて、1ヶ月以上かけて準備していくものを数週間でやれと言うのだから。
こんな無茶をエルヴィン団長は言わない。
おそらくはもっと上の、王政からの通達があったのだろう。
私はテーブルを囲む皆さんにお茶を出し終えて、その話の続きをここで聞いていても良いものか分からず一歩ドア側に下がると、察したエルヴィン団長が手を少し招いて、横にいることを許してくれた。
「おい、あの豚共は壁外調査をそこらのお使いぐらいに思ってんじゃねぇか?一度引きずって連れて行って、兵士の断末魔でも聞かせてやったらどうだ。」
「言葉の選び方が気にはなるが、激しく同意するよ。」
珍しくエルヴィン団長も呆れと苛立ちが隠せない様子で、リヴァイ兵士長に同意した。
「いつにするか、決めたの?」
「12月26日だな。準備期間と、事後処理含めてそのあたりが妥当だろう。」
「――――――ちっ、年末ぐらい平和に過ごしてぇもんだな。」
リヴァイ兵士長は悪態をついてソファに身体を預けた。