第30章 公爵
「ねぇハル―――――――話して。ロイとあなたの間に、何があるの………?」
眠るハルの髪を撫でながら、問う。
私が実家に戻って十日。
心なしかハルの顔色が良くなった気がする。でも、いまだにあの謎のビタミン剤は欠かさずに飲み続けている。まるで、義務のように――――――。私がなんのためにそれを飲むのかと尋ねても、悲しい笑みを向けるだけで真実を語ってはくれなかった。
約束の6日をゆうに過ぎて、私はまだ帰れずにいる。エルヴィン団長に手紙を出したものの、一刻も早く戻らなければという気持ちと、ハルを治すことに板挟みになり葛藤が絶えない。
その日もロイは家にはいなかった。
私が幼い頃のお父様と同じように、そのほとんどを病院で過ごしている。
病院の中の存在感としてロイは圧倒的で、その知性と美貌と人当たりで、お父様を凌ぐほどの信頼を手にしている。
お父様のことを少し見かけたが、あまり生気が感じられず、痩せた……いや、やつれたと表現すべきだろうか。それもあって、なおさらロイの力が大きく感じられた。