第29章 罠
おおよその経路や作戦を書き出し、無理がないかどうかを別の視点からも確認してみる。
その時の他の奪還作戦班の動きも含めて、頭の中でシュミレーションを繰り返す。
そこに、ドアの鳴る音がした。
「………俺だ。」
「あぁ、入ってくれ。」
「…………。」
リヴァイは無言で室内に歩を進める。
「どうした?」
「―――――ナナから連絡はあったか?」
「いや、ない。6日で帰るのはやはり無理だったようだな。」
「………そうか。」
「それより、リヴァイ班の当日の動きを見てくれないか?お前の意見を聞きたい。」
「ちっ、てめぇが行かねぇからといって無理難題言いやがって。」
いつも通りの悪態をつく程度の元気はあるようだ。
リヴァイは私の書いたメモを真剣な表情でじっと見ていた。
おそらく今奴の頭の中でも、平野をかけ、巨人を蹴散らしながらその作戦を遂行する様子を描いているのだろう。
兵士長自ら規則を破ってナナを自室に呼んでは風紀を乱し、常に悪態をついている困った奴だが、請け負った使命は強い意志を以って必ずやり遂げる。
これほど頼もしい存在は他にいない。
兵団にとっても私にとっても、この男の存在は大きなものになっていた。