第4章 再会 ※
イェーガー先生の元で働いてもうすぐ一年が過ぎようとしていた。この日、私は父に呼び出され王都に戻っていた。
今夜は貴族や名家、名だたる人々が一同に会する夜会が行われるという。そこにオーウェンズ家の代表として出席しろというのだ。
イェーガー先生のもとに行く許しが出たのも、こういった父の病院経営に関わる付き合いでは穴を開けないという約束の元だった。
本音を言えば、虫唾が走るような会だが、約束だから仕方ない。私は久しぶりに実家でハルに頼んで用意してもらったドレスに身を包んだ。
「素敵………!ステキすぎます、お嬢様!!!」
ハルは興奮気味に姿見の中の私を見つめる。
「そう?なんでもいいのよ、ただ愛想振り撒くためだけに行くんだから。」
私は鏡を見ながら適当に髪を結おうとした。
「お嬢様。まさか……そんな髪でノーメイクで行くつもりではないでしょうね?」
「え?だめ?」
「だめ?じゃありません!!あなたもう十七歳なのですよ?出会いの二十や三十ある年頃なんですよ?!」
ハルに叱られるのも久しぶりで、くすぐったい。
「おかしください!私が、立派なレディに仕上げて差し上げます!」
そう言うと、ハルは私をドレッサーの前に座らせた。
「お嬢様の髪の美しさを際立たせるために、ハーフアップにしましょう。……うん、十七歳らしい清楚さもあって、ドレスにもピッタリですわ。メイクはあくまでナチュラルに……ほんのりとチーク・リップだけ……。」
ハルは楽しそうに私を仕上げていく。
姿見の中には、自分でも見たことのない、少し大人の女性に近づいた自分がいた。
「………もう。せっかく美しいのになんです?その仏頂面。」
「だって行く意味が見いだせないんだもん。カエルの解剖でもしてた方がマシよ。」
ハルははぁっとため息をついた。