第26章 落着
「……今回の事と、ハーネスと、ダンを唆した事は認めるわよ………。でも屋上に鍵って何のこと……?」
心臓を重い石で圧迫されたような、嫌な不安に襲われる。
「ダンさんに……屋上に向かわせて……私を襲わせて………逃げられないように、鍵を、かけました………よね……?」
「かけてないわ!そもそもダンには噂を聞かせて唆しただけで、屋上に行くなんて話もしてない。本当よ。もう、嘘なんてついても無意味でしょ……。」
待って………アウラさんじゃないのなら――――――――
「ねぇほら、殴りなさいよ!」
アウラさんはやけっぱちのように顔を差し出した。
が、私の胸中は不安がとめどなく渦巻いて、それどころではなかった。なんだろう、この嫌な感じは。足の先から徐々に仄暗い何かに引きずり込まれるような、重く昏い恐怖。
「殴らないなら、もう行くわよ!」
「あ待って、ちゃんと殴ります。」
「……ちゃんとって何よ……!!」
アウラさん少しぎょっとした表情をして、再び目を固く閉じた。私はその頬にペチン、と小さく平手打ちをして、彼女をぎゅっと抱きしめた。
「なっ……?!何してんの?!」
「はい、これで無かったことにしましょう。」