第23章 扇揺 ※
「おや、どうした。」
私の手首を持ったまま、エルヴィン団長は同じようにかがんで目線を合わせてくれた。
「………腰が、抜けました。」
エルヴィン団長は目を丸くして私を見たあと、かつてないほど豪快に笑った。
「ははははっ!!」
「……わ…笑い過ぎです。」
私が少し膨れて顔を向けると、目の前にその蒼い瞳が――――――――
「――――――――――?!」
油断した。
唇が触れていた。
「―――――本当に可愛いな、君は。」
「な、に……するんですか……!」
「…………油断、しただろう。」
「………っ!」
「―――――言っただろう?私が、無害な男とは限らないと。」
かつてない至近距離で見たその蒼は、私が知るどの蒼よりも深く、そして複雑だった。
エルヴィン団長は人差し指を唇の前に立てて囁く。
「――――――リヴァイには、黙っておいたほうがいい。あいつの嫉妬は、怖いからね。」