第23章 扇揺 ※
三月――――――
しばらく降り積もっていた雪が溶け、時折汗ばむほどの陽気さえ感じる。訓練が始まって二ヶ月が過ぎた。
ほとんどの奴らがたどたどしくも、立体機動を使って移動ができるようになっている。中でも筋の良い奴は、100期のガキ共とも見劣りしねぇくらいだ。
「なぁ、ナナさんっって、ひ、控えめに言って………女神だよな………。」
「わかる!!!!俺さ、こないだ手当してもらったんだけどよ……!なんかこう、めっちゃくちゃいい匂いすんだよ!!」
「うわ、ずりぃ!!俺も看病してもらいてぇーーーー」
「………なんとなくよ、押しに弱そうじゃね?!俺、狙っちゃおっかなマジで……!」
でけぇ声でクソ面白くねぇ話をしているのは100期生の新兵のガキ共か。ナナが関わる人間が増えたことで、あちこちからナナの事が耳に入るようになった。
「………バカ、見てわかんねぇのかよ。どうやっても勝ち目ない人がいつも目光らせてんだろうが。」
「あ、お前一般兵じゃねぇか!なんだよ偉そうに!」
「一般兵だからって差別すんなよ。歳も同じぐらいじゃねぇか、仲良くやろうぜ。」
少しはマシな奴がいる。
あれは……ナナがいつか話していた、グンタか。なかなか見どころのある奴だ。立体機動も筋が良く、斬撃まで習得できそうだったな。
俺は遠巻きにくだらねぇ新兵たちのやりとりを見ていた。