第21章 耽溺
「なんだ。」
エルヴィンが横に座れ、と目で促す。
「なんだ気持ち悪ぃ。ここでいいだろ。」
「………ナナには聞かせたくない。」
「―――――――!」
隣にナナがいることさえお見通しか。
こいつの洞察力には恐怖さえ覚える。
俺はドカッとソファに腰かけると、エルヴィンは小さな声で話しだした。
「――――――――――――――。」
「―――――なぜ、言い切れる。」
「状況を繋ぎ合わせたら、これが一番しっくりくる。それだけだ。だが、これから裏もとる。」
「…………。」
「ナナには知らせるな。これは命令だ。お前も、ナナを危険から回避したいだろう?」
「――――――――了解だ、エルヴィン。」
エルヴィンはグラスをグイッと傾けて飲み干して立ち上がった。
「さて、では私は戻るとしよう。………あぁそうだ。兵士長たる者が、規則を破らせて自室にいち兵士を囲うのはいただけないが……もう日が変わっている。“今日”は調整日だったな。調整日の過ごし方は自由だ。今回は目をつむることにしよう。」
「ちっ…………うるせぇよ………。」
「あまり入れ込み過ぎるなと言っても無駄だろうが、一応言っておこう。――――――入れ込み過ぎると、その手から離れた時が辛いぞ。」
「心配しなくても、離す気はねぇよ。」
「………人の心は変わるぞ。」
「―――――――宣戦布告か、今度こそ。」
「―――――――そうだな、少し状況も……私の心も変わったみたいだ。」
エルヴィンは悪びれる事もなく、言い放つ。
「―――――おやすみ、リヴァイ。」
不敵な笑みをうかべて、あいつは去っていった。