第251章 〈After atory〉紲 ※
「お前のことをちゃんと理解したい。聞いていいか。」
「…………?」
「お前にはエイルがいるだろう。お前はどこからどう見てもエイルを愛して……可愛がってる。なぜまた……命の危険を冒してまでガキを生むと言う?」
俺の問に、ナナは一度目を伏せてゆっくりと、話し出した。
「エイルの中に……確かにエルヴィンがいてくれるんです………。」
「…………。」
愛した男を思い出すという話を、俺の前ですべきかとでも悩んでいるのか……わずかに言いづらそうに、でも小さくナナは自分の想いを言葉にした。
「――――記憶はどうやっても、薄れて消えていってしまう。私はそれが………怖い。でもエイルがいてくれるから、あの日々が嘘じゃなかったと………確かに在って……愛し愛されてたと、思える……。だから……リヴァイさんとのこの日々が在ったことの証明が、欲しい……それが、一つ目の、理由………。」
「――――他は?」
「――――あなたに何かを齎す……のは、全部、私がいい………。」
「――――………。」
「わ、私が……いなくなったら……っ、別の、女性、と幸せに……なんて……っ……、思えない、ごめんなさい………!」
「……それは……」
「私は欲張りだから……、あなたが初めてわが子を抱くなら、私が生みたい………。」
ナナの言葉に驚く。
――――ナナが俺を愛しているのは、わかっていた。だが………そこまで独占欲を露わにして俺を繋ごうとするとは意外だった。端から見りゃ面倒な女だというのかもしれねぇが……俺は嬉しかった。
俺がナナに対してどうかしていると思っているのと同等に……ナナもまた、どうしようもないほど俺に執着している。
それに加え、俺の心の奥底にあった、歪で汚く許されないと思っていた欲望が肯定されて……揺れた。