第248章 〈After story〉腕 ※
「だって、毎晩抱きしめて眠ってくれるのに……それ以上、なにもなくて……。リヴァイさんの匂いがするのに、体温もそこにあるのに……、触っても、くれなくて……!私ばっかり期待して、厭らしいことばっかり、考えて、しまって……!」
「――――………。」
リヴァイさんがものすごく驚いた顔で私を凝視してる。
あぁ、いたたまれない……。
呆れられてしまうだろうか、嫌いって、言われないだろうか。でも――――……きっと受け入れて、くれるって思うから……私は、すべて正直に、茹で上がりそうなほど顔を真っ赤にしながら、話した。
恥ずかしすぎてじわ、と涙が滲む。
情けなさすぎて……そんな顔は見せられなくて、見られなくて済むようにリヴァイさんの首に強くしがみついて顔を俯かせた。
「ご、ごめんなさ……い……。嫌いに、ならないで……。」
「――――ほう。」
リヴァイさんはただ一言だけの返事をした。
しばらく沈黙が流れたけれど……私は怖くて顔も上げられなくて、リヴァイさんが次の言葉を紡ぐまで、黙っていた。狡い女だと自分でも思う。すると、リヴァイさんの手が動いて……私を抱き締めたまま、なでなでと頭を優しく撫でながら……巣箱の奥へ、ベッドの方へと歩を進めた。
ちらりと見た巣箱のベッド沿いの歪んだ窓ガラスの向こうには満月に近い月が煌々とこちらを照らしていて、小さく体がすくむ。月の明るい夜は、エルヴィンがそこから私たちを見ているようで……胸が締め付けられる。
「――――ナナ。降ろすぞ。」
「…………。」
私はリヴァイさんにしがみついたままぶんぶんと顔を横に振る。だって降ろされたら、向き合わなきゃいけない。
その目で見つめられてしまう。
そんなの、恥ずかしすぎる……。