第248章 〈After story〉腕 ※
ナナの足も随分良くなった。
まだ長距離を歩かなきゃならねぇときには車椅子を使うこともあるが、家の中では随分と自分の足で歩くようになってきた。マーレでは一年近くもベッドで寝たきりの状態だったために足の筋力がすっかり落ちてしまい、まだまだうまく歩けない。だが、俺は実はそんなナナも悪くねぇと思っている。何かにつけて世話を焼ける口実になるからだ。
ある日の夜。
エイルを寝かしつけたあとにリビングに戻ると、ソファに座ったがナナ自分の足を手でさすっているのを見かけた。
「どうした?」
「あっ……、なんでも……」
「なんでもなくねぇだろう。痛むのか?」
ソファの前に膝をついてナナを見上げながら足に触れる。どうやらふくらはぎの辺りをさすっていたようだ。ネグリジェの裾からちらりと見えていた脚を、ナナがさっと隠した。
――――散々お前の恥ずかしいところももう見てるんだが……それでも恥じらって胸元や脚を隠そうとするのは、俺を逆に焚きつける。
「見せろ。」
「……大丈夫、です。多分ただの筋肉痛みたいなもので……。」
俺に見せることを拒否するようにナナがネグリジェの上から脚を庇うようにして抑えた。
「―――心配してる。」
見せろ、と言って応じないならさらに迫るよりも……ナナには、不安げな表情を見せた方が効果的だ。ナナはまるで少しの罪悪感でも覚えたように、う、と怯んで目を逸らした。
「きっと……今日は少し多く歩いたからか、足がびっくりしちゃっただけです……。」
そう言いながら俺の手がネグリジェの中に侵入しないように抑えていた手を放した。触れていいんだと解釈して、裾を少しはだけて脚を露わにすると、ナナが頬を紅潮させて小さく息を吐いた。
――――もう何度服を脱がしたり捲ったりしただろう。それでも未だに慣れない、という表情と仕草をするところがまたたまらなく可愛い。