第247章 〈After atory〉虹
「もしティルが嫌じゃなければ今度……飯でも食おう。」
「あ……、嬉しいんだけどでも……」
「もちろん子供も一緒に。」
「え………?」
「―――あ。嫌がるかなぁ……むしろ……ティルの子のほうが俺を……。」
そうだよな、お母さんといきなり知らない男が食事しだしたら警戒するか……なんてことをうーん、と考えていると、ティルはきょとんとした顔で俺を見つめていた。
「――――アーチ、変わったね……。」
「ん?」
「………とっても……柔らかくて、優しくなった………。昔の、冷静で感情を見せないアーチも……魅力的だったけど……。」
「――――あぁ……まぁ、いろいろあったしな。」
「――――今のアーチも、すごく……素敵で可愛い!」
――――ようやくティルが、あの頃と同じ笑顔で笑った。
彼女の言う『可愛い』を、昔の俺は理解ができなかったけれど、今の俺はそれがわかる。あの頃と変わらず俺に『可愛い』と満面の笑顔を向けてくれる彼女を、可愛いと……思うんだ。
リンファに、エイルに、ナナさんに……あの兵長にすら感じた感情。
いつかティルが俺に言った。
『守りたいとか愛おしいって想いが、可愛いってことだ』と。それを見つけた俺はもしかしたら、今度こそティルにちゃんと……寄り添えるかもしれない。
「――――ティル。」
「――――ん?」
「今君に会えて良かった。――――できれば、これで終わりにしたくない。」
「…………!」
「ティルにとって迷惑じゃなければ。」
「………っ……とってもとっても……嬉しい………!」
過去は変えられないし、負った傷も……すべてが元通りになるわけじゃない。でも、決して良くないことばかりが傷として残るわけじゃない。
傷を治すために強くなったり、変化したり……それが今を作っていて……俺たちはまたこれから未来を生きていく。
――――ねぇ兵長、心配いらないよ。
ずっと兄ちゃんとあんたの背中を見続けてきたんだ。
俺はきっと……もがきながら、足掻きながら、なんとかやっていけるから。
たまには遊びに行くからさ。
見てて欲しい、あんたに。
俺がこれから、どう生きるのか。
〈After story〉虹 ~Fin~