第20章 始動
取り残された私は、気まずい空気の中でリヴァイ兵士長の目を見た。
「あ、あの……ありがとうございます………。」
「てめぇは本当に問題児だな………。」
「……お言葉ですが、別に私がふっかけたわけでは………。」
目を逸らしつつ、ほんの少しの言い訳をしてみる。
が、気付けばリヴァイさんに強く強く抱きしめられている。
「一人でいるな。人気の無いところに行くな。常に、俺の視界にいろ。」
「……2つめまでは努力しますが、3つめは……それはちょっと無理です………。」
リヴァイさんの唇が、首筋に触れる。
ここは外で、しかもまだ他の誰かもいるかもしれない。
「兵士長……っ!!」
「…………。」
「前にあなたが言ったんです……っ!今あなたは兵士長で、私は兵士です………っ…。離して、ください……!」
「あぁ………」
リヴァイさんは目線を斜め上に上げ、思い出した顔をした。
あれは絶対に思い出した顔だった。
「――――――記憶にない。」
私の髪は乱暴に引っ張られ、身体が後ろにのけ反る。
自然と開くその唇を、リヴァイさんは食らいつくように塞いだ。
そのまま備品倉庫に押し込められ、私はリヴァイさんの後ろで静かに閉じられていく重厚な扉を見た。
私はまるでそう教え込まれたかのように、鍵のかけられる金属音に身を震わせた。