第245章 契
ここはどこなんだろう。
もうずっと……1人でこのふわふわした、真っ白な無限の空間みたいなところにいる。
ここは私が思い描くとその通りの景色に変わる。
ハルの料理を食べていた家のダイニング。
希望に満ちた外の世界への扉が開くような、地下街の一部屋。
お母様が洗濯物を広げていた山あいの小さな家。
青い空を背に佇む、ワーナーさんと過ごした時計塔。
大好きな人に出会えた王宮の豪勢なフロア。
エレンとミカサと……イェーガー先生とカルラさんのいる病院。
アルルとリンファと過ごした自室。
いつもホコリひとつ落ちていない執務室。
ハンジさんと語り明かした研究室。
一人で歌を歌った兵舎の屋上。
ミケさんやナナバさんに訓練をつけてもらった訓練場。
サッシュさんやペトラやオルオ、エミリーと笑い合って食事をした食堂。
お父様が微笑んだ院長室。
活気あふれるトロスト区の街並み。
悲しみの影が残るシガンシナ区。
多くの兵士達を飲み込んだ……巨大樹の森。
昇る日も沈む日も見つめ続けた風の強い壁上。
マリアさんが笑う病室。
ロイとマスタ―とグラスを傾けた異次元空間のような小さなバー。
かぐわしさ漂う茶葉の店。
娘と過ごした質素だけれど幸せに溢れた部屋。
――――憧れた愛する人に並びたくて足掻いた、団長室。
――――溺れるほどに想いを重ねた、月明かりの巣箱。