第243章 少女
「――――だいすき……。りばいさん。……むかえにきてくれて……わたしを、みつけてくれて……ありがとう……。」
その声は今までの生意気で溌剌とした声とは違って……僅かに小さく震えていて、全てを察する。
ナナの母親やハル、そして……ナナにこれだけ似てりゃロイもさぞかし可愛がっただろう。
それでも……父も母も側にいなくて、これだけ聡い少女だ。
自分が父と母がいないことを寂しがることすら、大切な家族を傷付けるとわかっていて……どれほど……寂しさを押し殺して笑ってきたのかと、思った。
「エイル。」
「??」
「――――寂しいと、言っていい。」
「…………!!」
抱き締めていた腕を少し解いて、至近距離でその頬に手をやる。エイルの蒼く深い色の瞳が……じわりと、潤む。
「お前が寂しいと言ったら、俺が必ず側にいる。お前が望むならどこにでも連れて行ってやる。眠れない夜は “とんとん” もしてやるし……、歌は……歌えねぇが……」
「……うたは、わたしがうたう………。」
俺が言い淀んだところに、エイルは涙を浮かべて言った。
そして大きく息を吸い込んで、いつかナナが俺のためにと歌った――――……あの歌を、うろ覚えのなのだろう、ぎこちなく、でも透明で温かく……柔らかな声で歌う。
だが不自然に、その歌声が途切れた。
「――――………っ……りばい、さ………。」
「どうした。」
「―――――ちょっとだけ、さみし、かった………。」