第243章 少女
パラディ島に、帰ってくることを躊躇った。
マーレに留まるべきだったのか。
だが、怖かった。
現実を受け入れるのが。
それに……あのままあそこに留まれば俺は……自分が壊れていく気がした。
――――それが怖くて……俺は目を背けて、この島に帰ってきた。――――ナナの願いを叶えてやる勇気も持てないまま。
アーチが俺を気にしてずっと側にいることはわかっていた。
あいつもこの戦い直後にどう身を置いていいのかわからなかったのかもしれない。それに……サッシュやリンファの想いを継いで、余計に俺のことが気になるんだろう。
――――だがあいつは確か、両親も健在だったはずだ。サッシュを亡くした両親の元へ帰ってやるべきだ。俺にかまわなくていい。
パラディ島に着いてすぐ、アーチ達が荷下ろしをしている間に俺はその場を去った。
それから何も考えることもできず、ナナの面影が強く残る巣箱に帰ることもできなくて……何日も何週間も宛もなく彷徨ったが、ナナの実家には……行けなかった。
ナナの家族には、マーレにいる時に事実を知らせる手紙を一通送ったままだ。一般人がマーレに赴くなんてことも許されていないため、家族をマーレに呼んでやることもできなかった。
ロイは……ハルは……ナナの母、そして―――――娘は……俺を恨んでいるだろう。
ナナを守ると誓ったのに……、俺はそれを成しえないままこうして一人、帰ってきた。
何を言える?
どんな顔してあいつらに会えばいい?