第241章 結末②
俺がいくら怒りをぶつけても、ナナはいつものように反抗的な目も向けない。
ただ穏やかに『ごめんなさい』と言いたそうに眉を下げて俺を、見つめていた。
光の失われそうな深い紺色は、底知れぬ海のようで――――……怖くなる。
やめろ
最期みたいな顔をするんじゃねぇ
やっと手に入れたこの世界で、俺は……お前と……
それなのに、お前はまた俺から離れるのか?
「お前はいつもそうだ……!俺のことをわかってるくせに、俺をいつもいつも、惑わせて引き裂く……!!なんとか、言えよ……っナナ……!」
「――――一人でも、多くの……命を…救…………」
「もうすぐ……もうすぐ街に着く……耐えろ、なんとか……っ……耐えてくれ……!」
「――――褒めて……ほし………なぁ……」
――――ナナの医師としての覚悟と、生きる意味だ。
わかってやりたい
理解してよくやったなと、褒めてやりたい
だができない
こんなにも苦しい
息ができない
どうすりゃいい
どうすればこの愛しい命を繋ぎとめられる?
わからない
嫌だ ナナ
なぜ
なんだってしてやる
ナナ
ただ笑って 側にずっと
俺の生きる意味は
お前だけを ナナ
お前を守ると、誓ったのに
俺は無力で
ただその体を抱き締めることしか、できない
ナナのぐったりとした体を抱いて、縋るように懇願する。
「――――………おいて、逝くな……!」
「………リヴァ、イ、さ―――――」
ナナが微笑む。
そして俺の名前を愛おしそうに呼んで――――……
大量の血を、吐いた。