第238章 光芒
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昇る朝日の白い光が、歪に少しゆがんだ窓ガラスを通して射し込んで、ベッドの白いシーツに波模様の影を作った。
眩しかったのだろう、その男はベッドに仰向けに寝ころんだまま鬱陶しそうに小さく舌打ちをして、その朝日を遮るように目元に手をかざした。
手をかざしてもなお眩しい太陽の光を彼は、今どうしても直視できなかった。遮りたくても、欠いてしまった指の隙間からいとも簡単に顔ごと背けたくなるような強い光が目に入る。男は左目をぎゅ、と細めて、苛立った様子で乱暴にカーテンをシャッと引いた。
右目は眩しさすら感じず、もはや機能していない。
もともと一人用のベッドなのにやけに広く感じてしまう虚しさが、また男の眉間に深く皺を刻んでその呼吸を苦しくさせた。
「………くそ………。」
まるで毎日来る朝を拒むかのように、小さく呟いて朝日に背を向けるように寝返りをうった。ごろん、と体を横たえて固く閉じた目を開くその瞬間はいつも、その目線の先に自分を映す大きな瞳が柔らかに細められていることを願ってしまう。
今日も彼の願いは叶えられることなく、誰も頭を預けない枕だけが目に飛び込んで、その空虚を拒むようにまた静かに目を閉じた。
失ったものを数えるのはその男の性には合わない。
自分を地上に引っ張り出した、底が読めない強烈な引力を放つ唯一無二の戦友との約束は果たした。
自分が失ったものよりもはるかに多くの命を、守れたと言っていいだろう。
これまで捧げられてきた仲間の心臓は、報われたと言っていいはずだ。
それなのにずっと、あの日からもうずっと彼の心は出口を見つけられずに彷徨い続けている。
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