第235章 決裂
痛い、痛い、痛い。
心臓が……灼けただれてしまうみたい。
色んなことがありすぎた。
フロックさんをこの手で、殺した。
――――初めて、人を殺した。
そして……ハンジさんが命を賭すことも、止めなかった。
見届けることも、しなかった。
飛行艇の後部から聞こえていたハンジさんの名前を呼びながら泣き崩れるみんなの声がやんで……ただ静かに、それぞれが今の現実を受けとめようと呆然と、しているのがわかる。
私は滲む視界で速度計や燃料計……あらゆる針の動きを注視する。それでなくても燃料を十分に入れる時間がなかったから……燃料を無駄にしないようにしなければ、みんなの犠牲も全て水の泡になってしまう。
「無事……飛び立てて良かった……。燃料は?」
操縦席の方にやってきたのは、目を赤くしたアルミンだ。
「あぁ……半分しか入れることができなかった……。」
「スラトア要塞まで保つかな……。」
「絶対に辿り着いてみせる。」
アルミンの不安を掻き消すようにオニャンコポンさんは言い切った。
「ハンジさんが繋いでくれたこの飛行艇……最後の望み。俺たちで必ず基地まで届けてみせる!!必ずだ!!なぁナナさん……!!」
「はい……!!必ず、命に代えても……!」
「だから……必ず地鳴らしを止めてくれ。何としてでも……。」
オニャンコポンさんもまた、故郷を地鳴らしから救おうと必死なんだ。それを理解してアルミンは、不安そうな表情を噛み殺して、凛々しく彼の肩を叩いてその言葉に応じた。
「あぁ。頼んだよ、オニャンコポン。」
アルミンは後ろの皆の方へ戻って……作戦を練り始めた。