第233章 花弁
――――――――――――――――――――
「オニャンコポンさん!整備はどうですか?」
格納庫の中で飛行艇を見上げながら、整備に関わっているオニャンコポンさんに尋ねる。
「ああナナさん、今しがた終わったそうで。燃料を注入すれば飛べますよ。良かった……彼らが頑張ってくれたおかげで、地鳴らしが来る前になんとかなりそうだ。」
「良かった……!」
エレンの元に向かえる可能性が高くなってきた。
――――待っててエレン。
あなたを止めようとしている。
みんな、あなたに帰ってきてほしいから。
――――悪魔になんてならなくていい。
まだやり直せる。
だから……。
そう、期待を込めて飛行艇を見つめていたから、気配に気づくのに遅れたんだ。耳の端に、小さな、水音と何かを引きずるような音を感じた。
振り向くとそこには、なぜ――――……
フロックさんが、瀕死に近い状態で、でも確かに銃をこちらに向けていた。
私達じゃない。
飛行艇を飛べなくするのが、目的だ。
「――――や、めっ……!」
フロックさんはなにも躊躇うことなく、数発を飛行艇に向けて放った。
そして私がフロックさんを止めようと彼の方へ駆け出したその姿を目視した瞬間、目を見開いて私の方へと銃口を向け直した。
「あんたは、どこまで……っ、俺達の、邪魔を、する……?!」
「――――っ……!!」
フロックさんの引き金が引かれたその瞬間、同時に私も親指でトリガーを引いた。
ぶしゅ、という音とともに――――鮮血が、散った。
そうまるで、赤い薔薇の花びらのように。