第233章 花弁
「リヴァイ兵士長!」
「ナナ。」
「立体機動装置を着けるんですね。お手伝いします。その指じゃ、難しいでしょう。」
「ああ、頼む。」
すでに立体機動装置を身に着けたナナは丁寧に、俺の体にハーネスと立体機動装置を取り付けていく。
「――――……トリガー、引けますか……右手……。」
「………懐かしいな。お前も同じ状況だった。」
「はい。あの時は……リヴァイ兵士長が親指で引けと、ヒントをくださったから……、なんとか、巨人に食べられずに済みました。」
ふふ、とあの日々を懐かしんでナナが笑う。
「私の握力では、小指と薬指ではトリガーが引けなくて。」
「俺は問題なさそうだ。」
「……流石です。」
ナナの顔はなんとか笑ってる、そんな顔だ。
――――行かせたくないと、喉まで出かかっているその言葉を必死に飲み込んで送り出そうとしている。
結局アニは飛行艇には乗らない決断をし、ガビとファルコとアニは、アズマビトと共にここから船で離脱する。
飛行艇でエレンを止めに行くのは……ピーク、ミカサ、アルミン、アーチ、ジャン、コニー、そしてハンジと俺と……操縦桿を握るオニャンコポンと、副操縦士を務めるのはナナだ。
「――――ナナ。」
「……オニャンコポンさんの右腕をしっかり担います。必ず皆をエレンのところまで、送り届ける。」
――――お前もアズマビトの船に乗れと、説得する最後のチャンスだった。だがこの意志の固い女はいつもどうやっても懐柔できない。
俺の言葉を聞く前に自分の意志を言いやがるから……俺も、腹を括るしかなかった。
「戦力にならないのはわかっています。だから……せめて、みんなを送り届けられる確率を少しでも上げられるようにしたい。」
飛行船の操縦もそうだった。
オニャンコポン一人では、作戦通りの航行は厳しかっただろうとオニャンコポンも言っていた。ナナが戦えなくなってから更に必死で身につけた武器で役に立とうとしている。
――――それを、俺が阻む道理はない。