第233章 花弁
「お前が望むならいくらでもつけてやる。――――どこにだ。」
「――――あなたをいつも想うこの心に。」
「ああ、わかった。」
ナナが両手を自らの左胸にそっと重ねた。
その両手首を開いて押し止めて、ふる、と震える豊かな左胸の膨らみに食らいついてその肌を吸う。
「――――んっ……。」
ぴくんと身体を跳ねさせて息を吐くナナを愛おしく思いながら唇を放して、その濡れた唇にもまたキスをする。左胸を見下ろすと、薬を飲めていないために病がわずかに進行しているのだろう。
強く吸っていないのにまるで薔薇の花びらのように真っ赤な内出血が、ナナの左胸を飾った。
ナナはそれを確かめて、ふにゃ、と笑う。
「―――嬉しい……。」
「出血しやすくなってんじゃねぇのか。」
「……かも、しれません。」
「馬鹿野郎、危機感を持て。」
「ふふ、はい……。」
「――――動くぞ。」
「は、い……っ……、ぎゅって、して、リヴァイ、さん……。もっと、キス、したい……。」
その甘い誘惑に勝てるはずもなく、肌を合わせて唇を合わせてナナの中を味わえばあっけなくイかされてしまう。
最後になんて、させない。
――――またこの痣が消える前に、この腕にナナを抱く。
情事を終えて白いブラウスを羽織るナナの白い胸元に紅く散ったその名残は血の色そのままで……ナナの白い肌との対比が怖いほどに、美しかった。
「――――ー……?」
ナナが部屋を出てすぐ、不思議な感覚を覚えた。俺が今一瞬、どこで何をしていたのかわからなくなる、記憶がすっぽりと抜かれた感覚。だが、ナナを抱いた体の熱もナナの匂いも俺の体にちゃんと残っていて……そこまで時が経っていないはずなのに、記憶だけが途切れている。
「なんだ……?」
怪我からくる意識障害の類か?
ひとまずその他に体に影響はなく、気にとめないことにした。