第232章 愛惜 ※
温かい。
リヴァイさんは温かくて、いつも……石鹸のいい匂いがする。私の胸に顔を埋めて、安らかな寝息を立てているその表情はいつ見ても綺麗で、少年のよう。
少し眠って、目が覚めた私はリヴァイさんの髪を撫でながら、ただひたすらに愛おしいという想いを募らせる。
いつまでも休んでいるわけにはいかない。少し眠れたし……ハンジさんの様子も気になる。行かないと……と、リヴァイさんを起こさないようにそっとその腕を抜け出せないかと試みる。身体を捩ると案の定、リヴァイさんの腕に凄い力が込められてまた引き寄せられてしまう。
「あっ……、やっぱり、だめか……。リヴァイさん、放してもらえますか……?」
「……………。」
反応はない。そう、あくまで眠っているんだ。彼は。
なら、少しくらい……悪戯しても、バレないかもしれないと、いつもされるがままの私は考えた。リヴァイさんの顎にそっと手を添えて上を向かせて、小さくその唇にキスをする。
ちゅ、と唇が触れた瞬間、沸き起こる熱情が胸を焦がすようだ。
――――好き。
好き……大好き。
「―――……お願いです……無事でいてね……。」
見えない右目、指のない右手。おそらく内臓にも随分ダメージを負っている。私が壁外へ出ようとするたびにリヴァイさんがそれを阻止したかった気持ちがわかる。
とても怖い。
あなたを失ったら……私は……。
「――――死なないで、お願い………。死んだら、許さない……。」
眠る彼に魔法をかけるように呟きながら、そっと親指でその唇をなぞった。すると黒い睫毛が持ち上がって、恋い焦がれるその目が私を映す。
――――と、思った矢先、背景がぐるん、と変わった。
リヴァイさんの後ろには、船室の低い天井がある。
「え……?」
「怪我人相手だからって、無防備すぎだな。」
いつもこうやってすぐに、自由を奪われて組み敷かれてしまう。