第231章 体温
「――――またあなたとこうやって抱き合って戯れられるその時は、全てが終わっているのでしょうか……。どんな景色が見えてるのかな……。ねぇ、リヴァイさん………。」
そう言って、大好きなその黒髪をさらさらと撫でる。
「――――生き延びましょうね、必ず。もう離れないって、決めたから。」
そう、願いを言葉に込めるように呟いてみる。
――――それは少し、怖かったからだ。
時折目が回る。
平衡感覚が乱されるような、頭に血が行かないような、良くない状態が時々、ふと現れる。
リヴァイさんは気付いてる。
薬を取りに行けているはずもなく、ずっと薬で抑えられていた病の進行が徐々に徐々に体を蝕み始めてる。
――――あぁそうか。
やっと分かった。
「………私も一緒に、寝かせる……ため……ですね……?」
手当を終えて自分が眠ったらまた、忙しなく駆けまわるだろうとわかってたリヴァイさんは……私を休ませたくてこうして、腕に閉じ込めた。
――――あなたの行動にはいつも絶対にちゃんと意味がある。
そしてその意味は……たいてい、私や仲間を想ってのことだから。
「――――大好き、すぎます……リヴァイさん…………。」
何一つ敵わない。
彼を癒すと言う名目だけれど、明らかに気遣われて癒され、満たされたのは私のほうだ。
愛しい彼をぎゅ、と抱きしめて……
私もまた、束の間の休息の為に素直に目を閉じた。