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【進撃の巨人】片翼のきみと

第231章 体温






「やった……!」




荒っぽいやり方ではあったけれど、無事に目的は果たした。横たわった機関車をホッとした気持ちで眺めていると、キース教官も側に来てくれた。



「おい、何をボサッとしている。お前は船に乗るんだろう?早く行け。」

「えっ、でも……!」

「武装した兵士が出て来るはずだ。気を引いておいてやる。その後に私も合流する。お前は先に行け。」



キース教官のその静かで頼れる眼差しは、やはり調査兵団団長という重責を負ってこられた人の目だと思った。

私を見つめてキース教官はもう一言、零した。





「――――お前の言った通りだ。誰も特別じゃないんだな。」



「………?」





キース教官の目線が、私の手に向けられた。

――――気付かなかったけれど、私の両手は小さく震えていた。自分の手で、多くの人に怪我を負わせることをした。……もしかしたら打ち所が悪くて、死ぬ人だっているかもしれない。

エルヴィンやリヴァイさんのように……何かを守るために、何かを捨てることが出来る人になれたことを喜ぶ歓喜の震えか、医師である自分が人の命を奪おうとすることへの怒りの震えかは……自分でもわからなかった。





「あ………。」



「――――あの時のお前の母親も……きっとそうだったんだな。震えていたんだ、私と……同じだ。」





キース教官は遠い目をした。



かつて “特別” に憑りつかれた人。

そして、多くの仲間を死なせたその重い枷を引きずって今を生きている人。



でももう解放されるのかもしれない。





キース教官は、とても清々しい顔をして空を仰いだ。





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