第228章 結託④
体を抑えられても怒りの収まらないジャンは、アルミンとコニーの腕を振りほどいて、森の中へ消えて行った。
私は急いでライナーの傷の手当てをしようとライナーの目の前にかがんでその傷口へ手を伸ばす。
するとその手首をライナーが掴んだ。
「――――いい、です……放っておけば治る。」
「でも痛いはずでしょう?傷口を覆えば痛みはマシになる。治るまでにも、痛みは少ない方がいいじゃない。」
「――――俺は――――……あの日、調査兵団を……殲滅させる気で、いたんですよ……。」
「――――そう………。」
「あなたの……大事な人を―――………。」
――――不思議と、心は静かだった。
「手を放して。」
強い言葉で言うと、僅かに臆したようにライナーが私の顔を見てからパッと、手を放した。流れる血を止めるために、布を傷口に沿わせる。
「――――痛かったね、ライナー。もう大丈夫。」
私の言葉にライナーは堪らなく情けない顔をくしゃくしゃにして、頭を垂れた。
――――心から許しているわけじゃ、ないけれど。
エルヴィンを返してって、今でも思う。
月を見上げる度に彼を恋しく思う。
――――でも、あなた達にも守るべきものがあって……ここにいるマガト元帥も、ピークさんも、ガビも、ファルコも……イェレナさんも。
誰かを大切に想い、守りたい一心でどんな残酷なことだってできてしまう私たちは、結局似たもの同士だ。
だから、きっと分かり合える。
そう、私たちはまだ話し合ってない。
もっともっと、お互いを知って時を重ねればきっと――――……
手を取り合えるはずなんだ。
だからその先の未来をまだ、諦めない。