第228章 結託④
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「さて!何はともあれ腹ごしらえからだよね!」
快闊なハンジさんの声が、なんとかその場を持たせていた。
日が暮れて焚火の周りに集まっては来ているものの、蟠りが多すぎるメンツだから……いつどこで掴み合いや殺し合いが始まってもおかしくないような張り詰めた空気の中、大鍋に水を入れて沸々と焚火で沸かす。ハンジさんと一緒にナイフで材料を削ぎ切りながら、野菜を煮込んでいく。
「えっ、ナナ料理できるの?意外。」
「得意じゃないんですけど……、シチューは一度作ったことがあるので作り方はわかります。」
「頼もしいな、助かるよ。」
パチパチと火が燃える音と、野菜を切る音と沸々と水の沸く音。私とハンジさんが黙ると、それ以外何の音も聞こえない。16人もいるのに……その様相は、マーレ対パラディ島のにらみ合いそのままの緊迫した雰囲気だ。
「―――散々殺し合ってきた者同士で飯を囲むか……。おもしろいな。どうして気が変わった?エレン・イェーガーを放っておけばお前らが望む世界が手に入るのだぞ?島の悪魔共の楽園がな。」
口を開いたのはマガト元帥だった。
――――ほんの少し打ち解けたと思っていたのだけど、やはりそれは実際に刃を交えていない私が相手だったからなのか……。ここにいるみんなとは実際に戦場で命を奪い合った。その相手に温厚に接してほしいなんて、それは……やはり無理だったようだ。
「我々はあと少しのところでエレンとジークの接触を阻止できた……お前らが奴の手助けをしなければな。」
マガト元帥の言葉に、私が声を発そうとするより先にハンジさんが答えた。
「説明した通りだよ元帥殿。私たちは虐殺なんて望んでない。じゃなきゃコソコソ森に逃げ隠れてシチューなんて作ってないよ。」
「つまり正義に目覚めたと言うわけか。」
―――その言い方は、嫌だ。
そう、思ったと同時にジャンが声を荒げた。