第227章 結託③
あぁ、エルヴィン。
君に見えていたものが、私にも見えるよ。
今ならわかる。君が夜、眠らなかった理由が。
忙しいからじゃない。
時間が無かったわけでもない。
――――ただただ、怖かったんだね。
私たちを見守ってくれているはずの死んだ仲間の……その視線が。
胸を張って言いたいんだ。
彼らに、私は私の役割を全うしたよって。そう言えるほど私がちゃんと強くなれたら……、また、彼らのことを、”見守ってくれている”ように、感じられるのかもしれない。
そうでありたい。
だから私は、突き進むんだ。
――――どんなに可能性が低くても。
「大半は壁の外に人類がいるなんて知らずに死んでいった。だけど……この島だけに自由をもたらせばそれでいい。そんなケチなこと言う仲間はいないだろう。」
仲間のため。
人類のため。
エレンのため。
死んでいった仲間のため。
もちろん全てその通りだ。
「虐殺を止めることができるのは……今しかない。」
だけど私は今確かに、自分が責任を果たして解放される瞬間のために、心を、体を動かしている。
――――言えないよ、こんなこと……他の誰にもね。
言えるとしたら……あの子にだけだ。
きっと『それでいいじゃないですか。』と、小さな温かい手で私の手を握って、笑ってくれる。
――――ねぇエルヴィン。
あなたがあの子に溺れた理由がわかるよ。いつだって受け入れて、肯定して、赦して、寄り添って……時に、叱ってくれるあの子を頭に描く。
『私は彼女を欲しいと思うぞ。調査兵団にも必要だ。』
――――あの時意地悪だって言ったけどさ。エルヴィン。
今は君の意見に、激しく同意するよ。
「ハンジさん。」
「ん?」
「俺はまだ――――、調査兵団です。」
ジャンが腹を括ったという顔で、真っすぐに私を見つめて協力すると返事をしてくれた。その表情は3人とも強く頼もしくて……心の底から一言、ありがとうと伝えた。
――――ナナ、リヴァイ。待ってろ、心強い仲間を連れて帰るから。
エルヴィン。連れてくよ、最後まで。君が残した調査兵団団長という重すぎるこの重責を果たすため、君が残してくれたこの頼もしい仲間達を。