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【進撃の巨人】片翼のきみと

第223章 闘志





大きな声と無数の立体機動のガスをふかす音。

その中で静かに、エレンの脳天を一筋の閃光が貫いた。それが砲撃だと気付いたのは、僅かに遅れて届いた砲撃音を聞いたからだ。






「――――なっ………。」






そしてその瞬間、俺の体にもどん、と衝撃があった。






「………?」






ブシュ、と吹きだした鮮血は、肩からドクドクと吹きだすように溢れて行く。



――――撃たれた。



どこから?と周りを再び見回すと、さっきまでは人影もなかったはずの建物のそこら中に銃を構えたマーレの兵達。そして……遥か上空の飛行船から雨のように降り注ぐ銃弾。

ぐらりと視界が揺れて、俺は建物の屋根の上にどさ、と倒れ込んだ。



荒く弾む息と鼓動に合わせてドクドクと流れ出る血液を止めなきゃ、死ぬ……。

腕に巻いていた白い腕章を抜いて傷口を強く圧迫して止血を試みながら、死にたいと言ってたくせにしっかり俺は生きる気じゃねぇかと自嘲の笑みが込み上げる。



霞む視界には絶望的な絵面。



――――だが、その戦局は一気に覆った。



俺の目に映った上空の飛行船を薙ぎ払ったのは、遠くからの投石だ。

遠く壁上に見えたのは……







――――獣の巨人。








待て、なんで……お前がここにいる?








「――――嘘だ、なんで……兵長……?」








兵長がついていたら、こいつがここに現れるはずがない。

兵長に何かあった?

ナナさんは?

ミカサは?

アルミンは……

ジャンは、コニーは……?







「まだ、戦わなきゃ……。」







ぐぐぐ、と身体を起こしてみるけど、目の前がぐるぐると回ってやがて景色が混ざり合って……混濁した闇のようなものが迫り来るみたいで、怖い。







「……まだ、やれる………、兄、ちゃ………。」








まず閉じたのは視覚だった。

強制的に闇に引き込まれる感覚。

そして次に聴覚が仕事をしなくなった。

爆撃音も銃声も、巨人同士がやり合って街が崩壊していくその音も、何も聞こえなくなって―――――……








俺は一人、静かに眠りにおちた。








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