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【進撃の巨人】片翼のきみと

第220章 覚醒





そこは、夜空のようだった。

かと思えば白昼の太陽の元にいるように明るくて……生き物が存在出来ない場所……異空間なのだとわかった。

現実でも夢でもない、まるで違う何か別の場所。

時間でさえ、まっとうに進んでいるのか疑問に思うほどの、見たことのない世界だ。



俺は膨大な画を……数々の場面を切り取った画が入り組み、流れ、また浮かんでを繰り返し続ける場所から投げ出されたように、気付けばそこに佇んでいた。

見上げる大樹のような光の柱は、まるで枝を張り巡らせるように俺の頭上を多方向へと伸びている。



――――それはとても、美しかった。





「………ここは……?」



「すべての道が交わる座標……だと思う。おそらく始祖を継承した王家はここに来たんだろう。始祖の力を行使する際に。」





声のする方に目を向けると、そこにはジークが昏い顔で俯いて座っていた。





「……兄さん。」



「待ちくたびれたぞ……エレン。お前が回復し目を覚ますまで、何年もここに座っていたような気がする。」



「何年も……経った……のか?」



「……よくわからないが、ここでのすべては一瞬の出来事だ。」





どうやら俺が感じた、時間ですら進んでいるのかと抱いた疑問は遠からずだったようだ。通りで、違和感があるはずだ。





「お前の首はガビに吹っ飛ばされたが……お前が完全に事切れる前に俺と接触を果たした。……成功したんだよ……。俺達は……始祖の力を手に入れた……。」





始祖の力……?ついに、これで……終止符を打てるのか。この長く苦しい戦争に。そう頭に描いたとき、背後に人の気配がした。





「……?!誰かいる。」





振り返ってその大樹のような光の柱の方へ目を向けると、その強大な力を背負うように佇むのは、ボロボロの服を着た、たった一人の……小さな、少女だった。

不思議だった。

長追い髪に奴隷のような服。

それははっきりと視認できるのに、彼女の顔だけが見えない。表情がないみたいに暗くくすんで、まるで彼女自身が見せないようにその表情を固く閉ざしているようだった。



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