第219章 影
「――――ロイさま、万が一に備えて……2、3日、王都から離れる判断をされるのでしたら、すぐにクロエさまに使いを出して……準備をしますわ。」
「――――うん、そうしよう。敵は未知数で……いつこの蒼い空から攻めてきても、不思議じゃない……。」
「承知しました。」
万が一本当に外の敵がこの島を陥落させようと攻めてくるのなら、栄えた都市ほど狙われやすい。
もちろん一番は兵団が構えるシガンシナ区だろうけど……、ここも、例外とは言えない。
とにかく僻地へ。
人里離れた場所へ、この騒動が落ち着くまでは……身を隠そう。
心配しすぎだと笑われるかもしれない。
でも、僅かなリスクでも摘みたいんだ。
天真爛漫に見えるこの天使が、ずっと……笑っていられるように、僕にできることは限られている。
父の代わりにも母の代わりにもなってあげられないけど、守りたい。
決して彼女の前でそれを言わないけれど、僕はもうずっと、願い続けてる。
――――生きて帰ってきて、姉さん。
仕方ないから、あのチビも一緒に。
姉さんに生き写しのこの子は……今日も空を眺めてた。
あなた達の帰りを、ずっとずっと、待ち続けてるんだ。