第218章 再戦
シガンシナ区の兵団支部もイェーガー派が占拠、完全に兵団も掌握した。
うまく事が運んだ。
喜びでも、悲しみでも、辛さでも……なんでもない、何の感情もなく、かつて同じ兵服を着て同じ物を目指していた奴らが、まるで奴隷のように壁に両手を尽かされてジークの脊髄液入りワインを飲んだ奴の腕に目印の布を巻かれる様子を、見ていた。
「……イェーガーさん。報告事項が2つあります。壁外に巨人のものと思われる足跡が……少なくとも2種類あったと報告が来ています。マーレから……すでにこの壁内に敵が侵入している可能性があるとのことです。」
廊下を歩きながら、フロックが不在の間に報告係を担っているイェーガー派の兵士が淡々と現状を報告する。
「そうか。――――炙り出す必要があるな。」
「はい、どうしましょうか……。あの……ガキの捕虜を餌に使いますか?」
ガキの捕虜……あぁ、サシャを撃ち殺したあの女のガキか。
「そうだな、助けを呼ばせて仕掛けるか。それで?もう一つの報告事項は?」
「隔離幽閉していた……、ナナ・オーウェンズが逃げた、とのことです。」
「なに……?」
フロックに厳重に閉じ込めておけるように人選も任せたはずだが。これから戦場と化すここに、まさか戻ってくるんじゃねぇだろうな……。
思考を巡らせていると、その兵士が下衆な笑いを見せた。
「………本当に逃げたんですかねぇ?」
「……どういうことだ。」
「――――俺聞きましたよ。フロックさんが……『あの女を幽閉先で好きに弄んでいい。』って言ってたの。あんな綺麗な女……密室でずっと好きにしていいなんて。男2人で嬲り殺したか、絶望の先の自殺とかじゃないといいですけどね。」