第217章 傷痍
エレンとの話し合いはまともな話し合いにもならなかった。
なぜなら、エレンが必要以上にミカサを傷付ける言葉を吐いたからだ。ミカサが抱く存在理由すら否定するようなことを言って……僕は我慢できずにエレンを、殴り飛ばした。
だけど子供の頃と同じく、その殴り合いは殴り “合い” にすらなっていない様相で……、僕は満足にやり返せないまま、エレンはフロックたちを追ってレストランを後にした。
ハンジ団長はジークの拘留地を案内させるためにフロックに連れられ、なぜかナナさんは隔離幽閉すると言ってまた別の奴らに連れて行かれた。そして僕らは……シガンシナ区の兵団支部の地下牢に閉じ込められた。……サシャのご家族も不運にも、一緒に、だ。
エレンに殴られた痕も巨人の力ですぐに修復が始まって……傷がすっかり癒えた頃、ジャンが僕に尋ねた。
「で、何でお前はエレンにタコ殴りにされたんだ?そろそろ話してもいいだろ。」
「ミカサを言葉で傷付けたから……僕から手を出して、殴り返された。」
「……ミカサを傷付けたって、どんな風に?」
「……それは……。」
僕が言い淀んだのを、ミカサは遮った。
「やめて……。もう、いい。」
「いや、良くねぇよ。どう傷付けたのか話してくれ。」
ジャンが執拗にエレンとの会話を問いただす。ジャンは何か掴めそうだったのかもしれない。僕も違和感はあったんだ。エレンは……ミカサが世話を焼いていつもエレンを見て助けることを、時折恥ずかしがったり悪態をつくこともあるけど、ミカサのことを……誰よりも信じて、誰よりも大切なはずなんだ。