第212章 悪夢 ※
「ナナさん、水……っ持って来ました!」
「ありがとう……!ファルコを横向けに寝かせて、出来得る限り口内をゆすぐ……、コニー、手伝って……!」
「はい!!」
意識のない男の子の口を水でゆすぐ。
……ブラウスさん夫婦は彼のことをベン、と呼んでいるようだったけれど、おそらく脱走して身を隠す時の偽名だろう。
本名はニコロさんが口にした、ファルコというらしい。
サシャを撃った女の子ミア……これも偽名で、本名はガビ。……そういえばガビがサシャを撃ったその時にも、反撃したジャンの放った銃弾から……ファルコがガビの身を守ったと聞いた。
「――――お願い……これで……洗い流せていると、いいんだけど……っ……!」
「ほとんど流れたら、大丈夫なんですかね……?」
「わからない……一定量摂取しなければ巨人化しないのか……でも……、ラガコ村にはガスを散布しただけで巨人化させられることを考えれば……ごく僅かでも……危険だと、思う。」
「――――………。」
ファルコのこめかみの傷も手当てをする。
――――酷い怪我だ。
私とコニーでファルコを介抱している間にハンジさんはニコロさんから色んな情報を聞き出していた。
ジークさんの脊髄液が入っているというのは事実ではなく、ニコロさんの想像だと。――――けれど、マーレから運び込まれている量がどう考えても異常であること、そしてニコロさんがこのレストランを任されて……兵団の上層部を客として招き始めてから、イェレナさんからこのワインを兵団上層部に振る舞うように言われたその言動から考えても、ほぼ黒に近い……事実だと私も、思う。