第210章 歯車③
ハンジさんの指示から数日後、ジャンとコニーの調べたところによると、やはりフロックさんとイェレナさんの接触機会が多かったことが明らかになった。
そこからさらに1週間後にはその他、エレンの行動記録なども合わせて兵団へ提出し……エレン単独行動には、フロックさんを介してイェレナさんが関わっていることはほぼ黒に近いだろうと結論付いた。
ピクシス司令直々に拘留しているイェレナさんに今回のこの件についてを問うという。
「――――ようやくオニャンコポンとの面会と帯同の許可が出た。」
「……長かったですね……。」
ハンジさんがオニャンコポンさんとの面会を兵団に申請しても、なかなか許可が下りなかった。……おそらく、これは推測でしかないけれど、情報漏洩罪で5人もの兵士が拘束された調査兵団の団長であるハンジさんに向けられる目は厳しい。
――――それをハンジさんもわかっていながら、それでも投げ出さずにできることをやろうともがくこの人が、とても誇らしく……愛しいと思う。
「ナナがニコロのところへ食事に行くのはいつ?」
「5日後です。」
「そう、聞き込みもして欲しいけどさ、もちろん。こんな毎日だから……たまにはゆっくり外の世界の料理を味わっておいで。……夢見てたものの、一つだろう?」
「……はい、ありがとうございます。」
ハンジさんは兵団支部の一室で紅茶を啜りながら、私に優しい目を向けた。その些細な心遣いが嬉しい。
本当はあなたと一緒に行けたら嬉しいのですが、と言いかけて……やめた。そんな暇がハンジさんにないことくらいわかりきっていたし、困った笑顔を作らせてしまうだけだと思ったから。
そしてその日の夕方、地下牢の看守をしていた新兵から声がかかった。