第18章 聖夜 ※
聖夜。
その言葉を初めて知ったのは、ワーナーさんのところで見た絵本だった。
「くりすます……は……だんろ……をかこって……?ワーナーさん、これなに?」
「あぁ、Family 家族、だな。」
「ふぅん。………かぞくと………きりすとのたんじょうを、いわう………。」
その絵には、温かそうな暖炉を家族が囲み、その横には豪華に飾られた大きなモミの木と、その下に積まれたたくさんのプレゼント。
プレゼントを開けて家族で笑いあう様子が描かれていた。幼いながらに憧れと、羨ましさを感じたことを覚えている。
「それにしてもエイルは覚えるのが早いな。もう外の世界の文字を、おおよそ読めるようになってしまったね。」
ワーナーさんが私の頭を撫でてくれる。それが嬉しくて、私は頬を綻ばせていた。ワーナーさんが褒めてくれるのが嬉しくて、私はどんどん外の世界の言葉を覚えていった。
「きりすと、って、なに?」
「あぁ………私も詳細はよく知らないのだが、神の子であり、救世主だそうだよ。だからその人が生まれた12月25日を、みんなで祝うんだ。それが、クリスマスというんだよ。大切な人と夜を過ごす日……聖なる夜とも言われる。」
「へぇ……いいなぁ、私もくりすます……やってみたいなぁ。」
幼い頃の私は、絵本からあふれ出る温もりと希望に満ちたその世界を、目をキラキラさせて眺めていた。